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<新型コロナ>デルタ株は今までの株と何が違う?

新型コロナウイルスの全国的な感染拡大が続いており、至る所でデルタ株に対する注意喚起がなされるようになりました。このデルタ株について、米国疾病予防管理センター(CDC)が纏めたスライドファイルがワシントンポスト紙に掲載され、とてもわかりやすいと感じたので紹介したいと思います。

デルタ株の感染力

                    文献1)のCDCのスライドファイルより引用

上記の図は、デルタ株の感染力を今までの株やその他の感染症と比較したものです1)
図は、右へ行くほど感染力が高く、上へ行くほど致死率が高いことを表しています。
青く表示されているデルタ株は赤く表示されている今までの株よりも感染力が高いことがおわかりいただけると思います。X軸の数字は基本再生産数で、今までの株では1.5~3.5を示していますが、デルタ株は5.0~9.5の間に位置しています。また、X軸上の8.5に位置しているChicken Poxは水痘であり、デルタ株は水痘と同じくらいの感染力であることからもその感染力の高さが伺えます。

このデータを見ると、あたかもデルタ株は水痘と同様に空気感染すると解釈できそうですが、感染経路としては飛沫感染や接触感染となります。ただし、マイクロ飛沫(エアロゾル)感染には注意が必要です。
マイクロ飛沫感染とは、密な環境における極めて小さな飛沫による飛沫感染のことですが、統一された定義はありません。病院の病室で考えると、感染者と同室の患者さんは感染する可能性があるけれども、別の病室の患者さんには感染しない2) と言った具合になります。
ちなみに飛沫感染、空気感染、接触感染の定義は以下のようになっています。

・飛沫感染:会話などで生じる直径5μm以上の病原体を含む飛沫を感染者から1~2mにいる人が吸い込んで起こる感染。
・空気感染:飛沫から水分が抜けた直径4μm以下の飛沫核が空気中を漂い、それを吸い込んで起こる感染。
・接触感染:感染者から排出された細菌やウイルスなどの病原体を含む唾液や体液(汗は除く)、分泌物、排泄物などにより、病原体に汚染されたものに触ることによって起こる感染。

デルタ株のウイルス排出量と排出期間

デルタ株は感染力が高いのみならず、気道から排出されるウイルス量が今までの株と比較して約1000倍多いことが報告されています3) 。また、ウイルス排出期間に関してはシンガポールのデータとなりますが、Ct値 が低値(30以下)の期間は今までの株が中央値13日に対してデルタ株は中央値18日であり、デルタ株は今までの株よりも長くウイルスを排出していると考えられます4)
※Ct値というのはウイルスをPCRで検出する際に陽性と判断したときの増幅サイクル数であり、数値が高いとウイルス量が少なく感染性が低いとされ、逆に数値が低いとウイルス量が多く感染性が高いとされています。

デルタ株の重症化リスク

文献4)のシンガポールの研究において、デルタ株では、今までの株に比べて、酸素利用、ICU入室または死亡のリスクが4.9倍(95%CI: 1.43-30.78)上昇し、肺炎のリスクが1.88倍(95%CI: 0.95-3.76)との報告があります。また、カナダのグループによる研究では、今までの株に比べ、デルタ株が毒性を増していることが示されました。入院リスク、ICU入室リスク、死亡リスクは、デルタ株症例は今までの株の症例に比べ、それぞれ120%(93-153%)、287%(198-399%)、137% (50-230%)と増加していました5)
査読前の論文であるため、改めて確認を行う必要はありますが、重症化しやすいと考えておくべきだと思います。

デルタ株への対応

感染力が高いだけでなく、重症化リスクも高い可能性があるデルタ株への対応ですが、基本的に今までの株と変わりありません。手洗い、マスクの着用、アルコールによる手指消毒、こまめに換気を行う、人との距離を保つ、ワクチンを接種するなどです。特に、ワクチン接種により重症化リスクは低く抑えられる可能性が高く、接種のメリットはデメリットを上回ると考えられます。副作用など、色々と指摘されていることもありますが、個人的には打てる時に打てるワクチンを打つことが大切だと思っています。
今後、新たに空気中でも感染力を維持する変異株が出現しないことを祈ります。

・文献
1)The Washington Post:Internal CDC document on breakthrough infections 2021
https://www.washingtonpost.com/context/cdc-breakthrough-infections/94390e3a-5e45-44a5-ac40-2744e4e25f2e/?_=1

2)CDC. Guideline for isolation precautions: Preventing transmission of infectious agents in healthcare settings, 2007.
https://www.cdc.gov/infectioncontrol/pdf/guidelines/isolation-guidelines-H.pdf

3)Li B,Deng A, et al. Viral infection and transmission in a large well-traced outbreak caused by the Delta SARS-CoV-2 variant. medRxiv. Published online July 12, 2021:2021.07.07.21260122. 
doi:10.1101/2021.07.07.21260122

4)Ong SWX, Chiew CJ, et al. Clinical and Virological Features of SARS-CoV-2 Variants of Concern: A Retrospective Cohort Study Comparing B.1.1.7 (Alpha), and B.1.315 (Beta), and B.1.617.2 (Delta). Social Science Research Network; 2021.

5)Fisman DN and Tuite AR. Progressive Increase in Virulence of Novel SARS-CoV-2 Variants in Ontario, Canada. medRxiv. Published online July 12, 2021:2021.07.05.21260050.
doi:10.1101/2021.07.05.21260050.

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